海よりも深くて波よりも透明
「夏葉は人に惚れさせるのが上手いんだよな。男も女も。まず器用じゃんこいつ」

「そうだね」

「運動もできるし勉強もできるしセンスもあるし。しかも顔までいいの。でもそれ鼻にかけないから誰も嫌わないんだよな。逆に腹立つわ」



夏葉って好かれてたんだね…。



なんかすごい想像できた。



クラスの中心って感じだ。



夏葉の方を見るとうっせえなという顔をしてる。



でももっと知りたいからあえて無視。



「なんか写真とかないの?」

「あるよ。見る?」



郁がノリノリでスマホの写真フォルダを見せてくれる。



高校時代のたくさんの写真。



それだけでどれだけの青春を楽しんできたかがわかる。



「この辺とか夏葉映ってる」



文化祭で看板作ってる写真、男子同士でなんかふざけてる写真。



ふとしたときの振り向いた顔と、そのあと写真を撮られたことに気がついてあきれながら楽しそうにしてる写真。



教室で紙パックの紅茶飲みながら勉強してる写真とか…。



夏葉が若くてめちゃくちゃ可愛いんですけど…。



今はパーマの髪の毛も、高校生らしいスポーツ刈りで。



制服も新鮮ですごいかっこいいいし…。



この写真全部ほしい…。



あとで郁にもらう約束をしておいた。



見てるだけで視力上がりそう。



「ん、これは?」



次にめくった写真は夏葉と郁の真ん中に遠慮がちな女の子が写ってる写真。



そんな写真が女の子違いで何枚か。



体育祭っぽい。



「後輩の子だな~。話したことほとんど無いけど俺と夏葉と一緒に撮りたいって」

「モテ男じゃん…」

「だからそうなんだって」



彼氏がモテてて嬉しいような嬉しくないような…。



この気持ちはなんだ…。



「これは? あっ、これも…」



夏葉がクラスの女子っぽい子いっぱいと映ってる写真がたくさん出てきた。



女の子5人と郁と夏葉と知らない男子でピースしてるやつとか。



クラスの女子が夏葉にメイクしようとして夏葉が嫌そうにしてる写真とか。



うわっ、なんかこれすごい嫌…。



言語化できないけどなんかめちゃくちゃ嫌!!



見なかったことにしよ…。
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