海よりも深くて波よりも透明
と思ったらまた出てきた。



窓際に夏服の夏葉が暑そうに内輪持ってそっぽ向きながら立ってて(めっちゃかっこいい)、その横にスカート短くてワイシャツのボタンがめっちゃ空いた可愛い女の子…。



「あっこれ夏葉の元カノじゃん。懐かし~」



郁が言った。



元カノ!?



これがもとかの……。



しばらく呆然と写真を見てた。



なんか得体の知れない怖い物を見た感…。



「は、お前こんなん穂風に見せんなよ!」



ずっと無反応だった夏葉が少し慌てた。



もう見ちゃったもん…。



郁は夏葉なんか気にも留めてない。



「でもすぐ別れたよな。付き合って3ヶ月くらい?」

「んな写真消せ…」

「向こうから告られてなんとなく付き合ったけど性格合わなすぎて速攻別れてたな」

「いいから写真消せよ…」

「わかったようっせえな-」

「うっせえのはお前だ!」



なんか予想外のダメージを受けたけど2人の漫才が面白いから忘れることにした。



うん…。なんかとにかく夏葉の高校時代はイメージできたよ…。



夏葉の制服姿とあどけない姿だけ覚えておこう。



あたしの高校の誰よりもかっこよかったもんね。



郁にお礼を言ってスマホを返した。



なんかこの短時間で感情がジェットコースター並みに忙しくて疲れた…。



結局郁は2時間くらい居座ってから夏葉の家を出て行った。



急にあたしと夏葉の2人になり、シーンとする室内。



さっきの続き、したい気もするけどそんな雰囲気でもなくなっちゃった。



「はー…。郁っておもしろいね」



とりあえず口を開いた。



「まじ急にわりいな」

「夏葉の高校時代の話聞けて楽しかったよ」

「そりゃよかった」

「なんかちょいちょい嫌な写真も見ちゃったけど…」

「忘れろ」

「忘れまーす」
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