海よりも深くて波よりも透明
でもやっぱ今こうして夏葉の隣にいられて幸せ。



夏葉との高校生活とかすごい憧れるけど。



文化祭とか一緒に出てみたかったな。



あっ、文化祭といえば…。



「そういえばね、再来週あたしの高校で文化祭あるんだけど来れる?」

「あーそっか、現役女子高生、文化祭とかやんのか…。うわ今なんかすげえ年齢差感じた…」

「そんなこと言わないでよ。あたし達のクラス、お姫様カフェやるから来てね」

「あいよ」



あたしはほとんど準備参加してないけど。



夏休みの間にクラスの係の子中心に色々準備してくれてる。



大会とか練習があるから行けなくて申し訳ない…。



練習終わりにたまに行ってるけど、みんな優しくてあたしが行けないことを理解してくれるのがありがたい。



「夏葉は高校のとき文化祭なにやった?」

「何やったっけな…。えーと…クレープ屋とたこやき屋と、あと最後の年はMV作ったり?」

「何それ!?」

「今考えたらしょうもない企画だけど、校歌とかオリジナル曲とか色んな曲でミュージックビデオ作ろうみたいになって、それで俺がカメラ回してた」



なんか素敵。



良い高校生活送ってたんだろうなって感じするよ。



それから2時間くらい夏葉の部屋で映画を見た。



夏葉と一緒にこうやって部屋でのんびり映画を見てる時間が一番平和で幸せだな。



夜はちょっと良いお寿司の出前を夏葉が頼んでくれた。



あと、ホールケーキをフォークでつついて食べたいというあたしのワガママに、2人じゃ食べきれないと文句を言いながら付き合ってくれたり。



幸福でお腹がいっぱいになりそうな誕生日だ。



時間になって、夏葉がいつも通り車で送ってくれた。



もう18歳なんだから門限もう少し遅くしてくれてもいいのに…。



家の前に着いて、少し不満げなあたし。



そんなあたしに構わず、夏葉はあたしのピアスを開けた耳たぶに優しく触れた。



「今度また、な?」



それって今日の続きってこと…?



夏葉に急にそんなこと言われるもんだから、ちょっと顔が赤くなった。



なんか負けた気分…。



好き…。



それから一瞬あたしの唇にキスをして、頭にぽんと手を乗せた。



「ん、龍臣さん心配すっから家入れよ?」



かっこよすぎるよ…。



次会うときまでもう既に待ちきれない…。



夏葉にあたしもぶちゅーっとキスしてから、逃げるように車を降りて家に入った。



世に言う「欲求不満」って感情、初めて知ったのは18歳の誕生日…。
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