海よりも深くて波よりも透明
それから郁と別れて一度家に帰り、軽く仕事のことをする。



夜になって時間を気にし出すが、穂風からの連絡はまだない。



まあ楽しんでるんだろうしあんま水差すのもな…。



だが、22時になっても連絡が来ず、さすがに心配になる。



穂風に電話をかけた。



しばらくして繋がる電話。



《もしもーし!》



ハイテンションで穂風が出た。



電話の後ろは人のガヤガヤした声。



「お嬢さんは今どちらにいるんですかね?」

《んー、学校の近くの焼き肉屋さん!》

「今何時だか分かってんのか? さすがに心配するだろ、連絡くらい寄越せ」

《ごめーん。って、もう22時!? やばっ》

「だよな? はしゃぐのも良いけど時間はちゃんと見ろよ」

《夏葉親みたい…》



はは…。



心配してる彼氏に向かって親みたいはねえだろ…。



「とにかく今から車で迎え行くから。帰る支度しろよ」

《はーい…》



渋々といった感じで穂風が返事をし、電話を切った。



ったく…。



財布とスマホだけ持って車を走らせた。



しばらくして着く焼き肉屋。



店の前で穂風が待ってたので、穂風の前で停車させる。



「夏葉―!」



テンションの高い穂風がドアを開けて助手席に座った。



「迎えに着てくれてありがとね!」

「ん」

「車のお迎え最高~!」



テンションたけえ…。



「お前、飲んだ?」

「飲むわけないじゃん! もしバレて選手生命絶たれたら最悪!」

「無駄にテンションたけえぞ」

「楽しかったんだもーん」



まあそれは何よりですが。



穂風の頭を片手で軽くぐしゃっとした。



穂風はご機嫌だ。



「ていうかね、そういえば…」



穂風がそう言って俺の方を見る。



「なんか…告られた?」

「は? 誰に」

「同じクラスの男子…」



昼間のあいつか…。



俺と会った日に告るとはいい度胸じゃねえか。
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