海よりも深くて波よりも透明
彼女の父親だからというだけじゃなく、貫禄がすごい。



そして渋くてかっけえ…。



だけどどことなく穂風にも似ていて。



改めて親子なんだと感じる。



憧れのサーファーである龍臣さんがこんな近くにいるのが信じらんねえよ…。



俺の隣に立って眠そうな穂風は、俺の肩にしがみついて寝始めた。



おいおい…。親の前でやめてくれ…。



「わざわざ送ってくれてありがとな…」



龍臣さんが口を開いた。



「とんでもないっす…」

「せっかくだしゆっくりしてけ」

「いやいや! まじ、すぐ帰ります…」

「いいからこっち座れよ」



ん…?



なんかこんなやりとりさっきもそよ子さんとした気が…。



デジャヴ…。



俺はびくびくしつつそーっとソファに浅く腰掛けた。



穂風は相変わらず俺にくっついて眠そうにしてる。



親の前で気まずいからまじ勘弁して…。



「穂風、あんた寝ちゃう前に歯磨いてきなさい」

「ん~…」

「ほら、動く!」



そよ子さんの言葉に穂風が嫌々立ち上がってどっかに消えた。



この空間には俺とそよ子さんと龍臣さんの3人。



まじで気まじい…。



「夏葉、この前あたしがあげた板どう?」

「あっ最高っす! まじでありがとうございました。超乗りやすいし楽しいしまじ最高…」

「あははっ、あげた甲斐あったわ」



そよ子さんはそう言って俺にお茶を出し、龍臣さんの横に座った。



「合宿んときの写真ちょっと見たけど良い感じじゃん。選手の特徴うまく掴んでる」

「えっ…そう言われるとすげえ嬉しい…」

「あんたは可愛いね~」



そんな会話をしてたら、歯ブラシを口に突っ込んだ穂風がのそっとリビングに戻ってきた。



眠そうなまま、俺の隣にストンと座る。



ゆっくりと歯を磨き、そのままウトウトと手が止まる…。
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