海よりも深くて波よりも透明
門限が迫ってきたので、夏葉がいつも通り車で送ってくれる。



だけど家に着くのはあっという間。



「ん。着いたぞ」

「帰んなきゃだめ? 夏葉の家行きたい…」

「可愛いワガママ言うんじゃねえよ。また今度な?」

「むぅ~…」



あたしが口をとがらせると、夏葉が片手であたしの頬を掴む。



いつもそうやって子供扱いするんだ…。



夏葉が「おもしれえ顔」とふっと笑った。



そして、あたしの唇に一瞬キス。



「ほら。家入れ」

「はーい…。夏葉も上がってく?」

「遠慮しとく…」



あたしの親と一緒の家にいるのがよっぽど気まずいみたいだね。



彼女の親なんてそんなもんだよね。



あたしも夏葉の親に会ってみたいけどな。



夏葉に似てるのかな!?



想像を膨らませつつ、夏葉に手を振って家の中に入った。



リビングではパパがソファに座って本を読んでる。



「ただいまー」

「おかえり。飯は?」

「ナナで食べてきた~」

「ん。じゃあ俺寝るから」



パパがそう行ってソファから立ち上がった。



あたしが帰るまで待っててくれるのが嬉しい。



リビングを出る直前、「あ、そういえば」とパパが足を止めた。



「俺、今週末仕事で一泊家あけるから」



パパが言う。
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