海よりも深くて波よりも透明
そして開幕した世界大会。



この大会は数日かけて男子と女子の予選と決勝が行われる。



俺はとにかく色んな選手の写真を撮りまくる。



穂風と愛姫は、明らかに乗り方のオーラが他の選手と違う。



撮り甲斐もデカいわけで…。



悠星も奮闘して順調に勝ち進んでる。



大会日程は順調に進んでいった。



穂風や愛姫は決勝へ駒を進めてる。



一方の悠星は、惜しくも準々決勝の前に敗退した。



「すげえ悔しい…」

「お疲れ。飯行くか?」

「奢り?」

「ん」



というわけでその日の大会後、悠星とサシで地元の飯屋へ。



「好きなの頼め」



そう言ってメニューを悠星に渡す。



「俺英語読めねえ」

「お前これから世界でやってくならちょっとは勉強しろ…」

「んー」



とりあえず適当に注文していった。



出てきたのは現地の料理の数々。



「にしてもマジ悔しいわ」



飯を食いながら悠星が漏らす。



「惜しかったな。良いサーフしてたけど」

「全然。カイとか超かっけえし」

「カイはな~…。まあかっけえわな」

「あと日本で言うと、女子だけど最近杉下真恋(すぎしたまこい)が前より伸びてきてるし。俺も負けらんねえ…」



杉下 真恋は、悠星の1歳下のサーファー。



日本の女子選手でぶっちぎりでトップの穂風には全く及ばないが、それでも以前よりも成績を伸ばしつつある。



「つーかカイって穂風のこと好きだけどいいの?」



悠星が唐突にそんなことを口にする。



やっぱ悠星も気づいてやがったか…。



「昔からそんな感じなのか?」

「まあ子どものときからずっと一緒だしずっと好きなんじゃね」

「あっそ…」

「2人ともトップクラスの選手だし。負けんな夏葉くん~」



負けるかよ。



サーファーとしてのキャリアとか一緒にいた年月とか。



そういうことじゃねえから。



でもまあ厄介なのは事実だな…。
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