海よりも深くて波よりも透明
そして、ついに決勝前日になった。



準決勝も軽く突破した穂風。



愛姫も決勝進出が決定したから、明日は恐らく愛姫と穂風は正面対決。



今までの予選ではトーナメントでその2人が当たることはなかった。



愛姫と穂風の対決は俺だけじゃなくみんなが注目してるところ…。



その日の夜、穂風に部屋に呼ばれて、ホテルのルームサービスを取ってる俺たち。



「ん~~緊張しすぎてご飯喉通らない…」

「ちゃんと食え」



そう言って穂風の口にローストビーフを押し込む。



穂風は「ん~…」と不満げな声を漏らしながらそれを食べた。



じとっとした目でリスみたいな頬をしてる穂風が可愛い。



一通り食べ終わって、軽く話して。



「じゃ、俺帰るな? 明日頑張れよ」



そろそろ穂風が寝る時間になったので、そう言って立ち上がった。



一緒に立ち上がる穂風の頬に手をやり、軽くその頬を撫でる。



それからおでこにキスをして、頭に手を軽く乗せた。



「じゃあな?」



そう言って部屋から出ようとした。



その瞬間。



「穂風?」



穂風が俺のシャツの裾を掴んでる。



「どうした?」



体を穂風の向きに戻し、穂風を軽く腕の中に収めた。



穂風が俺の胸に顔をつける。



そんな穂風の頭を軽く撫でると、穂風が俺の方を見て「今日は一緒に寝て…?」と、少し不安そうに言った。



「そうするか?」

「うん…」



不安そうな穂風の前にこんなこと言うのも悪ぃけど、さすがに可愛すぎるだろ…。



穂風のおでこあたりの髪の毛を撫でた。



「じゃ、寝る準備」

「うん」



穂風と寝る準備を済ませて、同じベッドに入り込んだ。



軽く穂風を抱きしめる。



俺の顔を見つめる穂風の唇に一瞬キスを落とす。



「明日も早ぇんだから眠れなくても目瞑れ」

「はあい…」



そう言って大人しく目をつぶる穂風。



そんな穂風の頭をゆっくりと撫で続ける。



「不安か?」

「決勝前はいつもプレッシャーで死ぬ…」

「いつも頑張ってるからこそそう思うんだよな」

「…」

「近くで見てた俺が、穂風はやれるって分かってるから。それは穂風自身も分かってるだろ? とにかく今は寝て、明日は落ち着いて臨め」

「うん…そうだよね…!」



穂風がさっきよりも強く俺に抱きついた。



俺は穂風が安心するよう、ゆっくりと穂風の頭を撫で続ける。



しばらくして穂風の寝息が聞こえてきた。



穂風の寝顔にキスを落として、俺も眠りにつく。



穂風の寝息が俺にとっても心地よかった。
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