海よりも深くて波よりも透明
「今日は何しに?」

「留学!」

「お~、そうか。花枝さんにコーチングしてもらうんだね」

「Yes!」



そんな話をしつつバーカウンターに座る。



「夏葉、今日も車か?」

「そうっすね」

「なんだよ、バーカウンター座ったくせに3人とも酒飲めないのか」



たしかに…。



ゲンさんには申し訳ねえな。



まあ仕方ないけど。



そのとき、「夏葉くん、俺が運転するよ」と声がした。



振り向くと悠星。



店を閉め終わって来たっぽい。



愛姫が悠星を見て明らかに警戒した顔。



愛姫は本当、悠星のこと嫌いだよな…。



「夏葉くん、いつもナナ来て酒飲めないでしょ」

「んなことねえよ。たまに代行呼ぶし」

「金かかんじゃん。夏葉くん金ないのに…」



うるせえやつだ。



でも、「いつも夏葉くんには世話になってるからたまには」という悠星に任せることにした。



その気持ちが嬉しいし。



ゲンさんにビールとおつまみを出してもらった。



まじでうまい…。



穂風が興味深そうに、俺の手からグラスを奪う。



「おい…飲むなよ?」

「飲まないよ! でも美味しそうにしてるからどんなかなって気になって」



そう言いながら、グラスの中のビールの匂いを嗅いでる。



俺の彼女は犬か…?



そんなやり取りをしてたら、常連さんたちが店に入ってきた。



「お~、世界大会出場選手が3人もいる! すげえ!」

「中尾さん…」



面倒くさいタイプのローカルの中尾さん。



俺も湘南来た初日に厄介な絡まれ方したし。



どこかで飲んできたのか、ちょっと酔ってるっぽい。
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