海よりも深くて波よりも透明
~穂風~

夏葉の家で生活してから結構経った。



夏葉の腕は、相変らず治ってはないけど、前よりは結構よくなってるみたいだ。



海で練習して、学校に行って夏葉の家に帰ったり、週に1回実家に帰ったりする日々。



アジア大会も近いし。



夏葉も、お医者さんにはアジア大会までにはギリ治るって言われてるみたいだ。



あたし的には心配だから海に完全に慣れてから仕事に復帰してほしいけどね。



夏葉は夏葉で仕事に対してすごく燃えてるみたい。



そういう姿はかっこよくて応援したくなる。



そんな夏葉は最近キス魔神っぷりがすごい。



起きてキス、あたしが学校に行く前にもキス、家で一緒に映画を見ててもキス、寝る前にもキス…。



しかもちょっとエッチなの。



学校行く前にとろけさせるのやめてほしい…。



「ただいまー」



学校から帰って夏葉の家に帰ると、夏葉が窓際でメガネをかけて、タバコを吸いながら読書をしてた。



なんかセクシ~…。



あたしに気づいた夏葉は、タバコの火を消す。



「おかえり」

「ただいま! 何読んでんの?」

「おいで」



その言葉に夏葉に近づくと、そのまま手を引っ張られて夏葉の膝の上に収容された。



ふわっとタバコの匂いが香る。



夏葉があたしの肩に顔を置いて、読書を続けた。



太宰治?



夏葉ってそういうのも読むんだ…。



夏葉が本を読みながら、あたしの首筋に鼻を寄せた。



くすぐったい…。



「5限、体育?」

「そうだけど…えっ、汗くさい!? シャワー浴びてくる!」

「汗の匂いまですげえ愛おしいんだけど…俺変態?」

「恥ずかしい…」



夏葉がエロいよ~…。



あたしのうなじに唇を寄せる。



恥ずかしいってば…。
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