海よりも深くて波よりも透明
「(なに? あたし達の会話分かったの?)」

「(俺あいつのこと追っかけるから! じゃあな)」



美玲を置いて穂風を追いかけた。



サーフボード置きっぱなしだし…。



それを持って穂風が行った方向を歩くと、砂浜の隅でいじいじしてる穂風が見えた。



「おい、逃げんなよ」

「知らないもん…」

「ごめんな? 分かんねえ話ばっかして」

「…」



俺に背を向けて砂浜になんか書いてる穂風。



『桐本バカ葉』…。



ひでえ言われようだな…。



「穂風」



そう言って穂風を振り向かせる。



ぶすっとしてる表情がなんだか可愛い。



そんな穂風のおでこにキスした。



「バーカ…。尻軽男…」

「それはもう言い訳しようもねえけど…」

「付き合ってたわけじゃないんでしょ!? 何回したの」

「1、2、3…5回くらい?」

「最悪最悪最悪! セフレってほどでもなくワンナイトでもなく中途半端に5回とかリアルな数字いや! ハゲろ!」



ハゲろって…。



まあそうだよな…。



俺ももし穂風にそんな相手がいたら死ぬほど嫌だし。



穂風の身体をそっと抱きしめた。



「もう穂風以外あり得ねえよ」

「当たり前じゃん…」

「分かってんじゃねえか」



俺がそう言うと、穂風が俺を黙ってぎゅっと抱きしめ返し、胸に顔をくっつけた。



「なんであたしの初めては全部夏葉なのに夏葉はそうじゃないの! ムカつく! 今までの女全部殺したい!」



可愛すぎ…。



ふっと笑って、穂風の唇に一瞬キスした。
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