海よりも深くて波よりも透明
「穂風かわいいだろ」

「まじやべえっす…」

「おい、俺の娘のことやべえとか低俗に言うなよ」

「だって可愛すぎてやべえっすもん、しょうがないじゃん…」



2人で何言ってんの…?



恥ずかしいからやめてよ!



酔っ払いたち…。



2人ともそんなキャラじゃないでしょ!?



「穂風のどこが好きか言ってみろよ」

「朝までかかりますけどいいっすか?」

「のぞむところ」

「まず、海の上での姿がかっこよすぎてまずはそこに惚れたし、のくせに素直で死ぬほど可愛いし、と思ったら弱いとこもあって、そんなん惹きつけられるに決まってんじゃん…」



嬉しいけど本当に恥ずかしい!



でも夏葉は止まらない。



「穂風といると、俺ももっと頑張ろうって思えるんです。それだけ穂風が頑張ってるから。そういう強いとこもすげえ好き」

「あいつは向上心強いしプライドたけえからな」

「つーかもう、笑顔可愛すぎるんすよ。何あの表情。俺だけに向けるのがたまんねえ~…」

「『俺だけに』? 調子乗んなよお前」

「だって俺だけですもん。あの表情俺以外に向けるのマジで無理。家族でも無理っす。俺だけのもん」



んん~~!!



本っ当に恥ずかしい!!



親の前でやめて!!



夏葉のこともパパのことも止めてほしいのに、ママは面白がって夏葉を見てる。



「夏葉!」

「ん?」

「もうすぐ年明けるから二年参り! 行こう!」

「しょうがねえな」



よかった! これでパパと引き離せる!



酔っ払い夏葉の首にマフラーを巻いてあげて、手を取って家を出た。



外の冷たい風が頬に当たる。



「さみいな」

「さむいね…」

「もっとこっち」



夏葉がそう言ってあたしをぐっと引き寄せた。
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