海よりも深くて波よりも透明
普通なら付き合う付き合わないの話になりそうなのに、この2人はそういうのじゃないみたい。



親友を取られた気分だ。



リアが、入ってきたあたし達を見て「おつかれー」と手を振った。



適当に座るあたしと夏葉。



「穂風、その時計どーしたの?」



リアが、めざとくあたしの左腕の時計に気がついた。



「夏葉に入学祝いにもらった~」

「超良いね」

「だって、夏葉」



あたしはそう言って夏葉の顔を見る。



夏葉はあたしの頭を片手で軽くぐしゃっとした。



「うわ~、夏葉がイチャイチャしてる」



郁が言った。



恥ずかし…。



「夏葉、俺も時計欲しい」

「なんで俺がお前に時計買ってやらなきゃいけねえんだよ」



夏葉が、ベッドの上にいる郁の膝を殴る。



リアが郁の肩をトントンと叩いた。



「郁ちゃん、あたしが就職祝いに買ってあげる~」

「え! まじ?」

「まじ!」

「じゃあ俺がキーケース買ってあげるよ」

「いえ~い」



まじ…?



それからリアの家でしばらく過ごしてから夏葉と2人で家を出た。



「お邪魔しました!」

「ん、また来な~ 」



まだ寒い4月の夜を夏葉と歩く。



繋いだ手だけがあったかい。



「穂風はサークルとか入んねえの?」

「ん~、とりあえずはいいかな。それより練習したいし」



ちょっとでも気を抜くとすぐに下から抜かされる…。



油断をしてる暇は一秒もないもん。
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