海よりも深くて波よりも透明
~夏葉~

穂風が大学に入学してから数週間。



あと少しで世界大会がある。



今回の開催地は日本。



今日は、開催地になる千葉の海に穂風と来てる。



大学生になって前よりも家でのきまりがゆるくなった穂風は、宿泊許可を得て俺と一泊二日の二人旅だ。



「じゃーん!」

「ん?」

「ウェットスーツ新調しました!」



穂風が、新しいウェットスーツを嬉しそうに俺に見せびらかす。



「どう?」

「色いいな」



MAKANAの新作のウェットスーツ。



渋みのある淡いブルーで穂風によく似合ってる。



「じゃ、行ってきまーす」

「ん、がんばれ」



穂風が意気揚々と板を持って海へ入っていった。



俺も機材の準備。



しばらく撮ってたら、穂風が派手に波に巻かれて視界から消えた。



しかも岩場…。



穂風なら大丈夫だろうと思いつつ、ひやひやして海まで駆け寄った。



ちょっとして穂風が海面から顔を出した。



ホッとする俺…。



「最悪!!」



穂風がそう言いながらインサイド(※岸側)へ戻ってきた。



サーフボードを抱えて岸に上がる。



って、板折れてるし…。



しかも…。



「ねえ! ウェットスーツ破れた!」

「まじかよ…」



確かに腕のところが少し破れてる。



「波に押されて岩のところに打ち付けられて板も折れたし! なんなの!?」



すげえキレてる…。



「怪我なくて俺は安心したけど」



俺がそう言って穂風の髪をかき上げる。



穂風はふくれ面だ。
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