海よりも深くて波よりも透明
「兄ちゃん前はどこ住んでたんだー?」

「台湾です」

「すげえな! 台湾はいいスポットあるもんな」



相変わらずガヤガヤと…。



「夏葉、うるさくない?」

「全然。歓迎されてるっぽくて逆に嬉しいわ」



それなら良かった。



たしかに、よそ者は帰れっていうタイプの人もいるもんね。



最初に夏葉に絡んでた中尾さんとか…。



中尾さん、同じローカルには優しいのにな…。



軽いフードメニューを何個か頼んだ。



「夏葉ってなんで台湾で働いてたの?」

「さっき言った事務所で紹介された仕事が台湾で、そのままそこで活動するか~って」

「じゃあ台湾の言葉喋れるんだ」

「英語と半々って感じ」



ふ~ん。



あたしも英語は喋れるけど他の言語は全然わからないな。



「お待たせ」

「おいしそ~! ありがと、ゲンさん」



出された料理をそれぞれつまむ。



さっき車の中でちょっと食べたからそんなにお腹は空いてない。



2人で喋りながらゆっくり食べていたら、お客さんが続々と増えてきた。



知ってる人も何人かいる。



「あっ、穂風ちゃんじゃん。久しぶり」

「ミナさん!」

「えーっ、誰? ついに彼氏~?」



なんで2人でいるとみんなすぐ彼氏って言うの!?



失礼じゃない!?



夏葉を見ると笑ってる。



あ、なんか嬉しいかも…。



「『ついに』って何?」



夏葉があたしに聞いた。



「えっ?」

「今『ついに彼氏?』って言ってたじゃん」



あ~…。



それはですね…。
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