海よりも深くて波よりも透明
浜辺に上がった彼女は、俺の方にぐんぐんと進んでくる。



やべ、勝手に撮ったから怒られるかも…。



近づいてきた彼女は、すげえ美人。



年齢は、俺とタメくらいか?



全身にまとうオーラがただ者じゃないような雰囲気を醸し出している。



それから、意志の強そうな目と、よく通った鼻筋。



ん? この顔どっかで…。



見覚えのある顔を、俺が一生懸命思い出そうとしているのに気づかず、彼女が寒さで血色のない唇を動かした。



「今の、動画? 写真?」



ん?



怒られると思いきや、意外な言葉。



どういう意味だ?



「今、あたしのこと撮ってたよね?」

「まあ…」

「動画? 写真?」

「写真だけど…」

「見せて」



彼女に言われるがまま、カメラのデータを呼び起こして見せた。



その写真をまじまじと見てる彼女。



「ん~…思ったより姿勢が良くないなあ…」



彼女がそう呟いた。



これで姿勢が良くないって言えるの、正気なのか?



彼女はどう見てもプロ。



つーか、その辺のプロサーファーなんかよりずっとかっこいいしめちゃくちゃ上手い。



日本のプロサーファーにはあんまり詳しくない。



あっちにいた頃は忙しくて、仕事以外のことを調べる時間もあまりなかった。



だからこそ、日本のこともよく知らねえのにこのままでいいのか? という気持ちもあり、こうして日本に戻ってきたわけで。



この女に、俄然興味が沸いてきた…。
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