海よりも深くて波よりも透明
「ん、味見」



熱いスープをふーふー冷ました夏葉は、開いたあたしの口にスプーンを突っ込む。



「おいしい!」

「ん。じゃあ並べるからテーブル拭いて」

「はーい」



テーブルを拭いて、ご飯を並べて。



あたたかい匂いが鼻の奥を通る。



幸せだ。



「はやく結婚したいな…」

「そうだな」

「今すぐでもいいけどね」



でもちゃんと大学出て将来のこともしっかり考えていかないと出来ないね…。



将来…。



あたしの将来にサーフィンはあるんだろうか…。



そう思ったら急に心がしおれてしまった。



今日一日忙しくして考えないようにしてたのにな…。



あたしの心を察したのか、夏葉が「食べるぞ」とあたしに声をかけた。



「あ、そうだね! いただきます!」



夏葉が作ったご飯は最高に美味しい。



一緒にいるから余計かな?



あたしの憂鬱も溶かしてくれる。



「あ~おいしかった、ごちそうさま!」



そう言って夏葉の膝に寝転がる。



寝心地最高~。



「おーい、食器下げろ~」

「やだ。誕生日だもーん」

「じゃあせめて膝からどけ…。食器下げらんねえ」

「だめでーす。ここにいて」



そう言って夏葉のお腹にぎゅっとしがみついた。



「しょうがねえなー…」

「やった」

「プレゼントいるか?」

「ほしい!」



夏葉があたしを膝に乗せたまま、体を伸ばして近くの引き出しをごそごそした。



綺麗な小さめの紙袋の何かを出す夏葉。



「ん」



あたしのお腹の上にそれを置く。



あたしは起き上がってそれを見てみた。
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