海よりも深くて波よりも透明
ゆっくりと包装を解く。



それは、小さなガラス瓶に入った可愛い香水だった。



きれい…。



「誕生日おめでと」

「ありがとう…」



香水は今までしたことがない。



海に入るあたしはどうせつけてもすぐ落ちちゃうから。



今のあたしは、海には入らない。



焦らず休んでていいっていう夏葉のメッセージでもあるのかな…。



うれしい…。



夏葉は、あたしのことを、すごく大事に思ってくれてる。



夏葉の首にぎゅっと抱きついた。



夏葉が笑ってあたしの後頭部を撫でる。



「あ、そうだ」



あたしはそう言ってベッドの方へ。



夏葉の枕に香水を少しかけた。



「何してんの?」

「これからこれがあたしの匂いになるから、寝るときあたしのこと思い出してね」



あたしがそう言うと、夏葉がふっと笑った。



「それよりこっちのがいい」



そう言ってあたしのことをそっと抱きしめて、あたしの首筋に鼻をあてた。



何それ…。



どっきどきする…。



顔赤いかも…。



久しぶりにドキドキしまくったあたしは、その場から動けない。



夏葉は抱きしめたまま、そんなあたしの顔を見て、一瞬キスした。



こんなんハマるにきまってる…。



あたしの19歳。



これからどうなっていくんだろう。



ものすごく不安だけど、きっとどんなときでも隣には夏葉がいる。



それだけでなんだか強くなれた気がした。
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