海よりも深くて波よりも透明
あたしが夏葉の腕を取りながらぼーっと眺めてると、「穂風はあの辺のブランドが合うんじゃね?」と、あたしを別のコーナーに引っ張った。



はっきりした色の化粧品が目立つブランド。



確かにかわいい。



でも…。



「夏葉、もしかして女の子の化粧品とか慣れてる?」

「…」

「やっぱそうなんだ…」



なんか手慣れてるもん…。



こういうコーナーいても全然動じてないし。



どうせ過去の女のメイク色々見てきたんだ…。



綺麗な年上のお色気お姉さんの…。



仏頂面をするあたし。



分かってはいたけどむかつく!!



1人でぷりぷりしてたら、それに気づかない店員のお姉さんが話しかけてきた。



「どういったものをお探しですか~?」

「あ、すみません、初心者でよくわからなくて…」



あたしがそう言うと、夏葉があたしの代わりに



「何かお勧めのものあったら適当にメイクしてやってどんな感じか見せてくれたりしますか?」



と店員さんに伝えた。



やっぱ慣れてる!



店員さんは笑顔で引き受けてくれたけど…。



それから、店員さんにされるがまま、色々説明を受けて、しっかりフルメイクをしてもらった。



大満足で勧められたもの全部買っちゃったし!



でも、なおちょっとふくれっ面なあたし。



夏葉がそんなあたしの顔をのぞきこんでふっと笑った。



「せっかく可愛くしてもらったのにいつまでそんな顔してんだよ」



そう言ってあたしのほっぺを軽くつねる。



「可愛い?」



夏葉に聞いた。



夏葉は面白そうに笑ってから「可愛いな」と答えた。



「じゃあ許す…」

「そりゃどうも。まあ悪いこと俺してねえけどな」

「…あたしと出会う前に色んな女と関係を持った罪」

「かなり無茶だな」



そんなやりとりをしつつ、今度はお洋服。
< 208 / 328 >

この作品をシェア

pagetop