海よりも深くて波よりも透明
~夏葉~

夏のある日。



ここのところ仕事が忙しく、久しぶりに穂風と会う今日。



今日は穂風が家に許可を取って俺の家に泊まりだ。



家に来た穂風は、ドアを開けた俺にこれでもかというくらい嬉しそうな顔で笑った。



「夏葉だ~!」



そう言って俺にぎゅっと抱きつく。



おいおい、まだ家の外だぞ…。



俺はそんな穂風を家に入れて、玄関のドアを閉めた。



「ねえねえ、今日のあたしどう?」



いたずらっ子のような表情で、俺にそう聞く穂風。



なんだ…?



今日の穂風はTシャツ風のミニのワンピ。



すらっと伸びた脚が、穂風のスタイルの良さを際立たせて可愛い…って、は?



「お前、これ…」

「そうなのー! 夏葉と同じタトゥー入れた!」



穂風の足首にタトゥーが入ってる…。



俺は左足に草のデザインのを入れてるけど、右足の同じ位置に、その草から花が咲いてるようなデザインのもの。



休みの間に色んなことに挑戦しろとは言ったけど…。



「お前これどうすんの?」

「なにが?」

「消えねえぞ」

「消さないけど?」



まじか~…。



その心は嬉しいけど。



まあいいか…。



普通に似合ってるし。



「痛かっただろ」

「超痛かった!」

「だろうな…。なんで彫った?」

「夏葉に会えなくて暇すぎて」



暇で彫るなよ~…。



穂風はニコニコしてる。



はあ…。



可愛い奴だな…。



心配もあるが、とりあえず愛おしい気持ちになったので、穂風のことをそっと抱きしめた。



穂風は「へへ」と嬉しそうだ。



俺って過保護なのな…。
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