海よりも深くて波よりも透明
しばらく穂風を抱きしめながら、気づいたらお互い眠っていた。



夕方頃に2人で目が覚める。



「ん…寝ちゃってたね」

「だな」

「寝汗かいて気持ち悪い…」

「俺飯つくってるから風呂入ってくれば?」



こくりと頷いた穂風は、ぼーっとした顔のまま風呂場へ行った。



さてと、俺は飯でも作るか…。



そう思って台所で準備をしてると、風呂場から「なつは―!」という大声が聞こえた。



なんだ…?



風呂場に行くと、素っ裸の穂風がシャワーを出しながら「お湯出ないんだけど!」と文句を言ってる。



浴室に入り、色々いじってみた。



お湯が出る気配はない…。



「ダメだ、給湯器壊れてるわ」

「え~? お風呂入れない…」

「銭湯行くか」

「銭湯!?」



穂風がびっくりした顔をしてる。



「行ったことねえの…?」

「ない」

「まじか…」



これだからお嬢様は…。



というわけで、興味津々な穂風を連れて銭湯へ行くことにした。



歩いて5分くらいのところにある銭湯。



楽しそうな穂風は、繋いだ手をぶんぶんと振り回す。



恥ずかしいわ…。



銭湯に着き、男湯と女湯で分かれる。



「じゃあ1時間後にここ集合で」

「わかった! なんか楽しいね!」



そう言って女湯に入っていった。
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