海よりも深くて波よりも透明
「何言ってんの…。あたし高校生だよ…」

「は…?」



高校生…?



その顔とそのオーラとそのキャリアで…?



「えっ…あたしが高校生ってこと知らなかったの!?」



あんま年齢とか興味ねえし…。



何年か前に若いのにすげえなと思った記憶はあるが、具体的な年齢とか全く知らなかった…。



「俺とタメくらいかと思ってた」

「えっ、夏葉って27とかそんな感じでしょ? いくらなんでもそんな上に見える…?」

「いや、俺、22だけど…」

「まじで!?」



いや…まじか…。



実際より5つも上と思われてたとは…。



どうやら穂風は高3らしく。



海の上の穂風は本当にかっこいいしオーラも物凄いから、まさか高校生だとは思わなかった。



つーか、穂風が高校生なら付き合うとかあり得ねえな…。



犯罪…というか、倫理的に微妙だし…。



まあ別に好きとかじゃねえからいいけど…。



それ以前に、穂風にとって、俺は10歳以上年上に見られてたってことか!?



ハハ、そりゃ相手にされねえわ…。



『穂風もまんざらでもない』とか思ってはっず!



あの『付き合いたいかも』ってのも俺が都合よく解釈してただけだろうな…。



対象外だから気軽に言えたみたいな…。



あ~…、忘れよ…。



なんかがっかりした感情がある気もするけど、気のせいってことにする。



第一俺、色気のある女が好きだし…。



うん、そうだ、そもそもタイプじゃねえ。



つーことで、忘れる!



穂風は「学校遅れる!」と言って、慌てて波に乗ってインサイド(※岸側)に戻って行った。



あんな小せえ波にもよくあんなかっこよく乗れんなあ…。



穂風の後ろ姿をぼんやりと眺めていた。



って、俺も今日から仕事だからあんまりのんびりしてられない。



そこそこの時間に海から上がった。
< 22 / 267 >

この作品をシェア

pagetop