海よりも深くて波よりも透明
「お邪魔しまーす」

「あんたも急だね…」



中にいたのはそよ子さん。



「どうも…。穂風は?」

「歯磨いてるけど」

「歯?」

「さっきニンニク料理食べたから気になってるんでしょ」



可愛いな…。



全然気にしねえのにな…。



気にしねえどころか、ニンニク臭かったら逆に可愛いとすら思うかもしれない。



リビングでちょっと待ってたら穂風が来た。



「今日会えると思ってなかったから会えて嬉しい!」

「だからニンニク料理食べてたわけ?」

「え、何ママ言ったの!? 最悪!」



こんだけ一緒にいて恥ずかしいとこも全部見てんのに、やっぱり匂いとか気にするんだな…。



可愛いからチューとかしてえけど、そよ子さんの前だから我慢…。



そう思ってたら、「あたしシェイプルームいるから、なんかあったら呼んで」と言って出て行ってしまった。



ナイス…。



そよ子さんが部屋を出て行ったのを確認してから、穂風を引き寄せた。



穂風も俺にベタベタくっつく。



「で、今日どうだったの?」

「あ、そうそう。リアムまじすげえの」

「へえ~」



そう言って今日撮った写真を見せた。



「へ~! なんかいつもの夏葉の写真とちょっと違うかも?」

「だよな? 一日一緒にいただけで結構変わってて、まじすげえなと思って」

「大興奮だね」



確かに、いつもよりちょっとテンション高いかも…。



やっぱ新しい世界を見たっつーか…。



それで興奮してるのかも。



「でもなんか嫉妬しちゃうかも」

「嫉妬?」

「ん…。こんな素敵に夏葉に撮ってもらえてさ」

「俺は早く穂風の撮りてえと思った」



ショートでもなんでも。



穂風を撮りたいと、いつもより強く思ってる。
< 233 / 328 >

この作品をシェア

pagetop