海よりも深くて波よりも透明
「あ、そういえば」



穂風が俺の方に体を向けながら言う。



「来週の夏葉の誕生日、うちの両親が夏葉のこと家に呼びなよだって」

「まじ?」

「うん、その日両親とも日本にいるんだけど、夏葉の誕生日だよって言ったらじゃあ来ればって」



それは普通にありがたい…。



彼女の親に誕生日を祝ってもらえるってのはありがたい話だ。



誕生日なんてそんな祝われるような年でもねえけど…。



「じゃあ来るって言っとくね」

「ん、よろしく伝えといて」

「はーい」



そして迎えた当日。



穂風の家に行くと「入って~」と迎え入れられる。



いつも通り玄関のドアを開けると、パーン!という音と同時にクラッカーが飛び散った。



「夏葉誕生日おめでとう~!」

「お~…ありがと」



ニコニコした穂風の後ろから、ぞろぞろと龍臣さんとそよ子さんがやってきた。



「あ、今日はありがとうございます…」

「ん、おめでと。入んな~」



そよ子さんの言葉に、靴をそろえて家の中にお邪魔する。



「穂風―、そこのクラッカーのゴミすぐ片づけてね」

「はあい」



そよ子さんに言われ、穂風がいそいそと散らばったクラッカーの飾りを拾う。



俺もそんな穂風を手伝って一緒に拾った。



「夏葉のお誕生日なのに手伝ってもらっちゃって悪いねえ」



穂風がヘラヘラと言う。



「思ってないだろ」

「バレた?」



ったく…。



ゴミを全部回収してからソファに座って一休み。



そよ子さんがお茶を出してくれる。



「あんたいくつになったんだっけ?」

「24っすかね~…」

「わっかいねえ」

「まあ穂風ほどじゃ…」

「ほんとだよ。穂風と付き合って1年半? あんた22のときに高校生に手出したんだから」

「いやほんと…すんません…」



気まじい…。



若干からかわれてる気がするけど…。
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