海よりも深くて波よりも透明
「夏葉」



龍臣さんが俺のことを呼んだ。



「はい」



そよ子さんには慣れつつあるけど、やっぱ龍臣さんはまだ慣れねえ…。



こええもん…。



オーラが…。



「写真見たぞ。かなり良かった」

「まじっすか!? ありがとうございます!」

「頑張ってんだな」

「まあなんとかやってます」



憧れの龍臣さんに褒められ機嫌の良い俺。



「良かったね、夏葉」



隣の穂風がのほほんと言う。



そんな俺らを龍臣さんが見ながら言った。



「お前には感謝してる」

「えっ!? いやいや」



龍臣さんに感謝されてビビる俺。



「穂風に対して親の俺らが支えきれなかったところを支えてくれてありがとうな…」

「とんでもないっす…。穂風が頑張っただけだし…」

「それでも夏葉の存在はデカかったと思ってる」



俺なんかまじなんもしてないのに…。



それでも、穂風の親からそういう存在として受け入れてもらえてるのは純粋にうれしい。



「にしても、写真売れて以降結構収入増えただろ」

「そうっすね…。ありがたいことに」

「家とかどうすんだ? 引っ越すのか?」

「いや~、それも考えたんすけど、立地いいし別に困ってないから、車もう少しでけえのに買い替えようかなとか思ってます」



俺がそう言うと、穂風が「え!? あの車変えちゃうの!?」と驚いた声を出した。



「嫌か?」

「嫌っていうか~…。まあ嫌なのかな…。あたし的には結構慣れ親しんだ車だったから~…」

「そう…」

「でも夏葉の車だもん、好きにして!」



珍しく聞き分けが良い…。



でもそう言われるとな~…。



うーん、要検討。
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