海よりも深くて波よりも透明
「あの2人なんかずっと一緒にいるね」

「みたいだなー」

「なんなんだろうね」



なんなんだろうな…。



「外野が勝手に言うことじゃないけど、好きだったりするのかな」

「さあなー。あいつが誰かのこと好きとかあんま聞いたことねえしな」

「そうなんだ。リアもないらしいし。恋愛マスターだけど」



他人のことはよく分かんねえな。



あんまり恋愛しない2人だからこそシンパシー感じて仲良くやってんのかもしれないし。



「じゃ、俺はそろそろ帰ろうかな」

「あ、待って!」



俺に寄りかかっていた穂風は、慌てて立ち上がった。



「ちょっとトイレ」



そう言って部屋を出て行く。



このタイミングでトイレ…?



と思ったら、しばらくしてデカいサーフボードを持って戻ってきた…。



「これ…夏葉に誕生日プレゼント!」



は!? まじ!?



びっくりして目を丸くする俺。



見るからに良いサーフボード。



隅に川村そよ子のサインが入ってる。



「今年、夏葉には本当にお世話になったから…。ママに頼んで、一本オリジナルの作ってもらったの。夏葉の体重とか体型に合わせてシェイピングしてもらったんだよ」



穂風が言った。



川村そよ子が作った俺専用の板…?



まじもんの高級品…。



オーソドックスな白い板。



「まじで嬉しい…。ありがとな…。そよ子さんも本当に…」



2人に頭を下げると、穂風はにこにこと、そよ子さんは涼しい顔。



「あたしにお礼は良いよ。お礼言いたいのこっちだし。穂風からは報酬ももらってるし~」



そよ子さんはそう言って、「プロとしてきっちりね。多少安くはしてあげたけど」と付け足した。



「うわ~まじか~…。まじほんと…ありがと」



穂風のことを軽く抱き寄せた。



本当はきつく抱きしめたいけどさすがに親の前なので!



でも穂風は気にせず、俺をぎゅっと抱きしめ返す。
< 245 / 328 >

この作品をシェア

pagetop