海よりも深くて波よりも透明
午前の練習が終わり、午後はCMの撮影。



最近MAKANAが新しく出したスポーツ飲料のCMに、真恋と一緒に出演する。



カメラマンは夏葉だ。



「CM最近一気に増えて不慣れなので教えてくださいね!」



語尾にハートマークが付きそうな勢いであたしと夏葉にきゅるんとした声を出す。



この子がいなければ夏葉に一人で撮ってもらえたのに~…。



波乗り中の映像は午前中に撮ったから、午後は飲料水を飲んでる簡単なカットだけ。



夏葉にこんな風に撮影されるのは新鮮だからドキドキしちゃう。



真恋も同じように撮られてるのが気に入らないけど…。



「はい、OK。お疲れ」



なんていう間に撮影は終了。



あとは、あたしの簡単なセリフを入れるだけ。



≪しゅわっと弾ける爽快感!≫



って、夏葉が真恋に話しかけられてる~…。



「夏葉さんって何歳なんですか~?」

「24」

「ええ! めっちゃ大人っぽ~い! あたしの2個上と思えないです~」



それからもベタベタと夏葉の腕や髪に触れて…。



イライラマックス!



早く録音を終わらせて夏葉のところに直行したいのに、イライラしすぎて失敗ばかりした。



その日の夜。



あたしと夏葉、愛姫で悠星くんの部屋に集まった。



「何あの女!? 夏葉に気がありすぎって感じ! あたしと付き合ってるの知らないの!?」

「あのオンナほんとさいあく! ユウセイにかわいいアピールしてる!」



どうやら愛姫も真恋に対して腹に据えかねてるようだ。



男たちは困った顔。



ちょっと好かれてるからってまんざらでもないってこと!?



「おい落ち着けよ…」

「だってムカつくじゃん! 何も感じないの!?」

「まあなんか距離ちけえな~とは思うけど。みんなにあんな感じだし」



みんなにはしていいけど自分の彼氏にされたら超ムカつくもん…。



愛姫とこの感情を分かち合う。
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