海よりも深くて波よりも透明
その後、就業後の小太郎さんたちと飯を食いに行った。



車で来たから、ノンアルコールビールを飲みながら喋る。



「そういやお前最近彼女は? 前付き合ってた子いたよな、どうなった?」

「あー、向こう行ってから遠距離ですぐ別れましたよ」

「そうか、今は?」

「いやー、いないっすね…」



今その話題は気まずいっす…。



小太郎さんは俺の気も知らず、話を進める。



「夏葉が恋愛長続きしねえのはなんでなんだろうな~」

「あんま恋愛にそこまでハマれないんすよね」

「本気で恋したことないんだろ。別にそれが悪いとかは思わねえけど」



確かにそうかもしれない。



今まで、なんとなく始まってなんとなく終わってたし。



だから穂風のことも、雰囲気的に始まりそうって思ったわけで。



年齢的にありえねえけど。



人を死ぬほど好きになったこととかねえな~。



まあ別にそれはそれでいいんだけど。



「今いい感じの人とかいねえの?」

「いや~…。いい感じと思ってたら相手実は高校生で、俺のことも10歳くらい年上だと思われてたことが判明して、ねえなって」



俺がそう言ったら小太郎さんはガハガハと笑った。



「そりゃ問題だな」



ですよね…。



「まあ真剣交際ならいいんじゃね? 厳密には犯罪じゃねえし」

「真剣ならまだしも、そんな好きって感情もないのにまずいっしょ…。いつ別れるかも分かんねえし」



小太郎さんは聞いてるのか聞いてないのかよくわからない。



まあいいや…。



いい時間になってその日は解散。



小太郎さんが全部奢ってくれた。



「まじ神…。ごちそうさまです」

「お~、今度は電車で来いよ」



小太郎さんたちと別れて車を止めてある駐車場まで歩き出した。



飲食店が並ぶ商店街。



そこをゆっくり歩いてると、一軒の店から出てくる女子高生と大人の女性2人。



あ~…、女子高生見ると穂風のこと思い出す…って、あれ穂風じゃねえ!?
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