海よりも深くて波よりも透明
~夏葉~

明日はついに世界大会だ。



穂風が復活してから初めての大会が世界大会とは結構酷…。



正直ブランクがあるのでそこまでの良い結果は残せないと思う。



穂風が久しぶりの大きな大会に強く立ち向かえっていけるか心配だ…。



でもそんなこと一番よく分かってるのは穂風だ。



穂風がやる、やれると言ってるから俺はそれを信じる。



今は、前日で緊張している穂風の寝泊りするホテルに来てる。



スイートルームのこの部屋は、俺が泊まってるホテルとは違って広くてきれいだ。



さっきからソファで穂風にコアラみたいにしがみつかれてる…。



もう2時間くらいこうしてるかも…。



「穂風」

「なあに?」

「トイレ」

「早く戻ってきてね」



了解了解…。



さっとトイレに行って戻ると、穂風がすぐに俺をまた捕まえてソファに座らせた。



俺は穂風のことをなだめるように、頭を撫でてやる。



穂風が俺により一層体を預けた。



今日の昼間、穂風が練習に出たとき、練習場所がかぶって杉下真恋と出くわしたらしい。



普通に挨拶を交わしただけらしいけど。



どうやら真恋のコンディションが良さそうだったみたいで不安感が増してるようだ。



「周りとの差なんて関係ない…自分との戦い!」



穂風は自分に言い聞かせるようにつぶやく。



そんなこと言いつつやっぱりこんな状態だからどうしても不安からは離れられないらしい。



「夏葉がいてどれだけ心強いか分からないや…」



俺の胸によっかかっている穂風が、俺のことを見上げて、顔を近づける。



そのままキス。



「外の空気でも吸い行くか?」

「行く…」



よし。



穂風の手を取ってソファから立ち上がらせた。



部屋から出ると、オートロックで部屋が閉まる音がする。



それからエレベーターに乗って下まで。



高層階なのでそこそこ時間がかかったが、ホテルに隣接する公園まで下りた。
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