海よりも深くて波よりも透明
夜の公園は暗い。



「フィリピンって野生動物って何がいるのかな」

「何だろうな…なんか…鳥?」

「適当なこと言ってる…」



なんとなくする他愛もない会話。



穂風もいつもの調子に戻ってきた感じがする。



でもあんまり夜に外で長居するのも良くない。



30分くらい夜風に当たり、ホテルに戻った。



またしばらく長いエレベーターに乗る。



部屋の前に立ってドアを開けようとするときに気づく。



ちょっと待て、俺ら2人ともルームキー持たずに出たよな…?



穂風と顔を見合わせた。



と、ちょうどその時、「穂風と夏葉くんじゃん」という聞きなれた声がした。



見ると愛姫と悠星が仲良く腕を組んでた。



2人もどこか外に行ってたらしい。



大会のときの選手のホテルはいつもMAKANAが手配してくれるから、穂風とは部屋も近い。



「ちょうどよかった、ちょっと部屋の内線貸してくれ」

「どうした?」

「鍵忘れて部屋入れねえからフロントに電話する」

「だめ。愛姫の下着とか落ちてるから見せらんねえ」



悠星がそう言ったら愛姫が悠星の肩をバンッと殴った。



「へんなこと言わないで!」

「悪い悪い」

「悪いとおもってないでしょ!」



愛姫が悠星に怒ってから、俺らに笑いかけた。



それから「かしてあげるからちょっと待ってて」と言って、悠星の腕を引っ張って部屋に入っていく。



しばらくしてから部屋のドアが開く。



愛姫がそっと出てきた。



「OK. Come on in(いいよ、入って)」



中に入れてもらうと、穂風の部屋とは違う間取りだが、これまた広い部屋。



どうやら悠星の部屋に愛姫が一緒に泊まってるようだった。



MAKANAは愛姫と悠星の分で2部屋取ってるはずなので、1部屋余ってもったいねえなあと思う。
< 253 / 328 >

この作品をシェア

pagetop