海よりも深くて波よりも透明
その場で立ち止まってじっと見てると、女子高生と大人2人が会釈して別れた。



女子高生がこっちの方に歩いてくる。



やっぱり穂風じゃねえか…。



向こうもこっちに気づいたらしく、めちゃくちゃ驚いた顔をしている。



いや、可愛いな…。



穂風に近づいた。



トレーナーに、ブレザーと薄いチェックのスカートの制服姿の穂風は、いつもとは違って年相応に見える。



こうして見ると確かに高校生のガキだ。



「なんでここにいるの!?」

「いや、こっちのセリフ…。俺は仕事」

「あたしも仕事。雑誌の取材」

「忙しいんだな。お疲れ」



俺がそう言うと、なぜか穂風はへらっと笑った。



うわ、なんかときめいた…。



いやいやいや、やばいって…。



今ガキだって認識したばかりだろ。



俺はロリコンじゃねえ…。



なんかやばい気がするから離れたいが、さすがに都内で会っておいて、置いていくわけには…。



「俺車だけど乗ってくか?」

「いいの!?」



穂風は、キラキラした笑顔。



…。



いや、なんでもない。



駐車場まで黙って歩き、車に乗り込んだ。



穂風を助手席に乗せるのは2回目。



夜の東京の街を車で走る。



なんか視線を感じる…。



「なんだ?」

「運転する…お、男の人、ってかっこいいね」

「…」



なあ、まじでおちょくるのやめてもらっていいか…?



「男の人」で言いよどんだことを都合良く類推してしまう。



「男の人」ではなく、「夏葉」って、名前を、言おうとした…?
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