海よりも深くて波よりも透明
「事後にイチャイチャするのってなんかめっちゃいいね。幸せ」



穂風が言った。



幸せなところ水を差して悪いが…。



言うか…。



「穂風」

「なあに?」

「リアムがさ、俺と一緒に仕事しないかって言ってて…」

「へえ~! すごいね!! 良かったじゃん」



穂風が笑顔で俺に腕を回しながら俺のことを見上げる。



「それが…1年かそれ以上、日本を離れて世界中をリアムと周ることになる」

「えっ…」



穂風が布団から起き上がって俺のことを見下ろした。



「やだ!!」



やっぱり…。



わがまま姫発動だ…。



「1年も会えないってこと!?」

「下手したらそれ以上…」

「いや!」



とりあえず俺も起き上がって穂風の肩に布団をかけた。



穂風がそれを払いのける。



「1週間会えないだけで寂しくて死ぬのに1年以上会えないなんて無理!」

「俺もそれは厳しいけど…」

「じゃああたしも一緒に行く!」

「大学あんだろ…」

「夏葉は会いたくないの!?」



穂風がそう言って泣き出した。



風邪引くって…。



穂風にもう一度布団をかけてから抱きしめた。



「俺だって会えねえのはまじ無理だけど」

「じゃあ行かないで…」

「でも、俺にとってまたとないチャンスなんだよ…。穂風が頑張ってるのと同じくらい、俺も頑張りてえの」

「…」

「正直、俺から会いに日本に行くのは多分無理だけど…夏休みとかに会いに来てくれねえ?」

「ばか…」



穂風がそう言ってから俺に軽いパンチをした。
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