海よりも深くて波よりも透明
「熱海の方まで行ってみっか」

「わーい!」



車はぐんぐん進む。



今までの車よりも車高が高いからなんか偉くなった気分だ。



ニール・ヤングをかけながら、窓を開けて海を見てると、付き合う前に夏葉と2人で葉山までドライブに行ったことを思い出す。



あの日は全部が胸いっぱいだった。



あれから色々あって…。



今こうやって2人で笑っているのが奇跡みたいだ。



2時間ほどで熱海に着いた。



「夏葉、お腹すいた」

「どっか入るか」



というわけでファミレスに入った。



海を見ながら439円のパフェを食べる。



「うまー」

「それ食ったら海下りてみるか」

「うん」



夏葉ってほんと優しいよね…。



今だって本当はあたしに世界に行く話を認めてほしいんだと思う。



だけど何も言わないであたしの言葉をただ待ってる。



パフェを食べ終わってから2人で海に下りた。



靴と靴下を脱いで水に足を入れる。



真冬の海水はすごく冷たい。



「夏葉~」

「ん? …って」



あたしが夏葉に足で水をかけようとしたらそれより先によけられた。



「そんな何度も引っかかんねえよ」



確かにあたし毎回やってるかも…。



「おりゃ」



夏葉があたしのことを海に押した。



濡れる!



逆に夏葉のことをぐいっと引いてみた。
< 263 / 328 >

この作品をシェア

pagetop