海よりも深くて波よりも透明
「うわっ」



海にこけそうになる夏葉を受け止めた。



そのまま腕にしがみついて大笑い。



夏葉があたしのことを急に抱き上げた。



「ギャーー」



そのままあたしのことを海に投げようとする。



「最低!」

「ははっ」



笑ってる夏葉にむくれる。



寒いし~…。



海から出て浜辺に出たら、夏葉が自分のハンカチであたしの足を拭いてくれる。



夏葉の肩につかまるあたし。



至れり尽くせりだな…。



「ったく、世話がかかるなお前は」

「ありがと~」



こんな寒い冬の海で何やってるんだあたしたちは…。



浜辺に腰を下ろした。



隣の夏葉も引っ張って腰を下ろさせる。



夏葉の肩に頭をもたれた。



夏葉があたしのおでこを優しく抑える。



「夏葉~…」

「あ?」

「夏葉って本当に優しいよね」

「ははっ。急にどうした」

「大好きだなって…」



そう言って夏葉に唇を向けた。



夏葉がそれに応えてキスしてくれる。



「リアムの仕事のことだけどさ…」

「うん」

「どうしても行かないとだめ?」



肩に頭をもたれたまま夏葉に目線を向けた。



夏葉があたしのことをまっすぐ見る。



「そうだな」

「…」

「例えば、もう穂風と一生会えないんだったら俺は穂風を選ぶよ。だけどそうじゃないから。俺はもっと頑張りたい。お前に肩並べて立てるように」



そっか…。



そうだよね。



あたしばっかり夏葉に応援してもらってる。
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