海よりも深くて波よりも透明
「行ってきて、夏葉」

「いいのか?」

「うん…。あたしも、もっと大きくなった夏葉を見たい」



夏葉があたしの言葉にふわっと笑った。



それからあたしのおでこにキスをする。



「ありがとな? がんばってくる…」

「うん…。毎日電話してね…」

「時差あっても絶対取れよ?」

「夏葉こそだからね!」



行かないでって本当は思ってるけど。



だけど頑張ってほしいっていうのも本当の気持ちだから。



しばらく夏葉に寄りかかって2人で海を眺めていた。




暗くなってきたので「帰るか」と2人で立ち上がった。



「寒い寒い」と言いながらお互いくっつきあって車に走る。



車に乗ったらエンジンをかけて暖房マックス。



「あ~足がかじかんでる~」

「足出して」

「はい」



夏葉があたしの足を両手で包む。



「かゆい~」

「我慢我慢」



しばらくそうしてたら治ってきた。



「よし、じゃあ行くか」

「うん、出発~」

「このままお前ん家直行して世界周ること報告するわ。今日どっちいる?」

「今日はどっちもいるよ」

「了解」



こうやってあたしの親にきちんと報告してくれるのも夏葉の誠実さだよね…。



あたしの家にはすぐ着いた。



平日のこの時間ならスイスイだ。



「ただいまー」

「お邪魔します」



夏葉が来ることは事前に連絡しておいた。



返事ないけど…。
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