海よりも深くて波よりも透明
リアムに案内されてタクシー乗り場まで向かっていたら、穂風から『おつかれさま!』と返事が返ってきた。



寝てろっつったのに…。



リアムが「(ミカゼか?)」と覗き込んでくる。



「Yes…」

「(元気か?)」

「(まあ…)」



それから俺のホーム画面の穂風も目ざとく見つけてヒュウと口笛を吹いてきた。



普通にはずいわ…。



それから始まった撮影の日々。



リアムは基本的にヘラヘラしてる。



そしてよく撮影をすっぽかす…。



集合場所に来ねえと思って家に行くと女と寝てるとかもしょっちゅう。



この人の裸にも見慣れたわ…。



「(またかよ…)」

「(わりぃわりぃ。今何時?)」

「(もう12時だっつーの…。今日13時から雑誌のインタビューあるっつったよな!?)」

「(わりぃわりぃ)」



リアムとはだいぶフランクに話すようになった。



っつーかあまりにもだらしなさ過ぎてこのくらいじゃないと付き合ってけない。



「(このアジア人誰?)」



一緒にいた巨乳の女が裸を隠すこともなくリアムに聞いた。



「(俺の…相棒?)」



リアムが答える。



普通に嬉しいじゃねえか…。



「(名前は?)」



女が俺に聞いてきた。



「(夏葉っすけど…)」

「(今度あたしと寝ない?)」



リアムが「(おーい…)」と苦笑してる。



「(寝ないっす…)」

「(えー! いいじゃん、一回アジア人と寝てみたいの!)」



そう言って裸のまま俺ににじり寄ってきた。



「(夏葉、いいんじゃね? お前もご無沙汰だろ? バレねえって)」



リアムが俺にクズな言葉を投げかけてくる。
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