海よりも深くて波よりも透明
「いつ話しても時差あるし。時差があるから毎回電話できるわけでもないし」



それはちょっと分かってしまうかもしれない。



夏葉と毎日連絡は取ってるけど、物理的距離をどうしても感じてしまう。



そういう距離がずっとちょっと寂しい。



「そういうのをさ、未来が分からないまま続けてくのは…やっぱ勇気いるよ」

「…」

「お互い多分強さが足りなかったんだと思う…」



必ず仕事が終われば日本に戻ってくる夏葉と違って、2人はいつまでやるか分からない遠距離を続けていくんだもんね…。



確かに…それはかなりしんどいかも…。



「悠星くん…」

「ん?」

「まだ愛姫のこと好き?」



悠星くんは静かに何度もうなずいた。



切ないね…。



「好きなだけじゃ乗り越えられねえこともあるんだな~…」



悠星くんがそう言いながらお酒を飲む。



なんて言っていいか分からないや…。



あたしが同じ立場だったら。



どうするんだろう…。



夏葉と別れるなんて考えたこともない。



めちゃくちゃつらいだろうな…。



なんだか考え込んでしまった。



帰りの車でママに悠星くんと愛姫の話をした。



「遠距離ってやっぱきついのかな…」



そうしたらママがアハハと笑った。



笑うとこ!?



「あたしとタツ見てみなよ。世の中のカップルの真逆を行って超うまくいってんじゃん」



た、たしかに…。



ママとパパの状態があたしにとってあまりにも普通すぎて忘れてたけど。



常に遠距離生活を自らしてるんだもんね。



まあかなり異端だと思うけど…。
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