海よりも深くて波よりも透明

チューブ

~夏葉~

愛姫と悠星の破局はかなりの衝撃。



動揺させるから穂風には言わなかったけど、多分遠距離とかもあるんだろうな…。



俺も台湾に行ってから遠距離で別れた経験があるからなんとなくは分かる…。



後日、愛姫から、話を聞いてほしいと言われて、カリフォルニアを出る最後の日の夜に愛姫と会うことに。



それがリアムにばれて、なぜか俺も行きたいと…。



愛姫に手出す気じゃねえだろうな…。



愛姫に「リアムも行きたいって言ってるんだけど」と言ったら、「いいよ」と言われたので仕方なく連れて行くことにした。



先に待ち合わせ場所の店に来ていた愛姫は、俺らの顔を見た瞬間に泣き出した。



やばいなこれは…。



「(泣くなよ愛姫)」



リアムが愛姫の隣に座って肩を抱く。



愛姫がリアムを振りほどいた。



「Don’t touch me…(触らないで…)」



ほんとだよ…。



軽いなこの人は…。



「(リアムも連れてきていいって言ったあたしがバカだった!)」



そう言ってまた泣いた。



それはまじでごめん。



「(触ってほしいのは悠星だけなのに!)」



泣きすぎて手がつけられない…。



まだ相当好きなんだな…。



愛姫が泣いたまま俺の方を見た。



「(穂風から…なんか悠星の話聞いた?)」

「まあ…」



俺はあいまいに返事をする。



悠星の元気がないこと、愛姫のことをまだ好きだと言っていたことは聞いてる。



だけどそれは多分伝えるべきじゃない…。



「(向こうから別れるって言ってきたのか?)」



リアムが愛姫に聞いた。



愛姫が首を横に振る。



「(全然会えないことでちょっと喧嘩したの。ずっと遠距離を続けるのが不安で)」

「…」

「(それで…こんなに不安で、会えないのに、お互いのこと縛るべきじゃないんじゃないかって話になって…)」



それで別れることに決めたってわけか…。



なんて言ったらいいか分からない。



2人がそうやって決断したことなら俺が不用意に口に出すことじゃない。
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