海よりも深くて波よりも透明
それからしばらく部屋でイチャイチャ。



「そろそろ海行くか?」



夏葉のその言葉で海に行くことにした。



滞在時間は1週間と短いので、この1週間の間に良い写真を収めないといけない。



海の目の前のホテルを取ってるので、海にはすぐ着いたけど、リアムはまだ来ていない。



しばらく2人で浜辺に腰かけてた。



「そういえば、話したいことって何だったの?」

「あ、えーっとな…」



夏葉を見ると軽く頭をかいてる。



なんか言いづらそう…。



そのとき、「夏葉」と女の声がした。



声の方を見ると、髪の長い綺麗な女の人。



誰…?



夏葉のことを見ると『しまった』という顔をした。



その顔を見て、不安でドキドキしはじめる心臓。



なに…?



浮気…?



「夏葉、誰…?」

「…俺の、元カノ」



元カノ!?



なに…なんで…?



「実は…こっちに来たときに偶然会って…。穂風に言うタイミング図ってたら今日になっちまった…ごめん」

「ありえないよ!」



あたしは思わず立ち上がった。



それから夏葉の肩を殴る。



「夏葉のバカ!」



そう言って走って逃げた。



「穂風!」



夏葉が追いかけてあたしの腕をつかんだ。



それを振りほどくあたし。



あたしがいない間に、あたしが知らない間に元カノと会ってたってこと?



毎日夏葉に会いたくて、不安になったり頑張ったりしてたあたしがバカみたいじゃん…。



ホテルの部屋に引きこもって泣き続けた。



夏葉と久しぶりに会って本当にうれしかったのに。



こんなことになると思わなかった…。



あまりにもつらすぎる。



夏葉から着信がたくさん来てたけど、それも全部無視した。



夏葉のバカ…。
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