海よりも深くて波よりも透明
それから穂風は「撮影しよっか」と笑顔を俺に向けた。



俺はもう一度穂風の頭を撫でる。



「大丈夫か?」

「うん、プロだもん。昨日はサボってごめんなさい…」



穂風…。



強くなったな…。



リアムに電話して、今から撮影することになった。



「(もういいのか?)」

「(うん、昨日はごめんね)」



それからの穂風の波乗りはやっぱり素晴らしかった。



会わない間にまた上達したかも。



あとで聞いたら「ストレスの発散がいい形で波乗りに現れた」って言ってたけど。



「(やっぱいいな、穂風)」



リアムが素直に褒める。



穂風は世界的なカメラマンに褒められてうれしそうだ。



そんな穂風にちょっとジェラ…。



まあいい。



ずっと海岸から望遠で撮っていた俺だけど、リアムから接写していいと言われたので、俺も海に入って間近で穂風を撮ることになった。



この距離で穂風のサーフィンを見るのも久しぶりだ。



チューブ(※巻いている波のこと)から出てくる穂風をカメラで抜いて撮る。



すげえ良いの撮れたな…。



海から出た穂風に見せると、「なんか夏葉の写真一段と良くなってない!?」と褒められた。



素直に嬉しい…。



やっぱリアムのそばでいろいろと見せてもらってるからな…。



それからドローンで上空からも撮影したりして、なかなか良いものが撮れた。



明日からもしばらく撮影は続く。



こうやってプロ同士でやれるのもすげえ嬉しい。



やっぱり穂風が一番だと改めて思った。
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