海よりも深くて波よりも透明

そして、ついに帰国の日がやってきた。



空港にはリアム一人。



「(本当に…一年間、お世話になりました…)」

「(おう、俺も夏葉がいて楽しかったし助かった。ありがとな)」

「(リアムのおかげで一皮も二皮も向けた気がする)」

「(なんだそれ。下ネタか？)」



はあ…？



こんなときにもこの人は…。



「(また俺も日本に行くし。そのときはよろしくな)」

「(俺もまだまだ世界飛び回る予定だから。そのときはまた…)」

「(今から離れると思うとなんか寂しいな！)」



リアムがへらへらと笑った。



「(でも俺はあんたのいい加減ぶりから離れられると思うとそこは嬉しいけどな)」

「(冷てえこと言うな～)」

「(だけど本当に…本当にいろいろと教えられた。まじで…ありがとう)」



俺の言葉に、リアムが俺に熱いハグを交わした。



力強いそれは、俺の未来も後押ししてくれてるようで。



「(本当はこんなでけえ男じゃなくて柔らかい女の子抱きてえけどな～)」



なんていつもの軽口を言うので、「(悪かったな)」とリアムの背中を強めに殴った。



リアムはハハッと笑う。



「(じゃあ…気を付けてな)」

「(おう。リアムもな)」



そう言ってリアムに背を向けて歩き出した。



本当にタメになる一年だった。



リアムから教わったことは絶対忘れない。



これからはもっと躍進する。



その想いを胸に、日本へ帰った。



日本では穂風が待っていて。



夜おせえのに…。



穂風が俺を見つけた瞬間に飛びかかってきた。



「おかえり！ 夏葉！」

「ん、ただいま…。待たせたな」



そう言って強く穂風を抱きしめた。



「もう本当に終わり？ どこにも行かない？」

「ん、これからは穂風と一緒だ」



俺が言うと、嬉しそうな顔でもう一度俺のことをぎゅっと抱きしめた。



「眠くねえか？」

「夏葉が帰ってきた嬉しさで眠気なんて吹っ飛んだよ！ 夏葉こそ疲れてない？」

「疲れた。早く帰るぞ」



そう言って穂風を連れて俺の家への帰り道を急いだ。