海よりも深くて波よりも透明
くたくたに疲れたあたしは夏葉の家でだらり。



夏葉の膝に寝転がると、あたしのおでこにかかった髪の毛をかき分けてくれる。



「おつかれ、ありがとな」

「ううん…。夏葉の家族にたくさん会えてお話できてうれしかったよ」



夏葉がふっと笑ってあたしの手を握った。



「無事卒業してくれよ?」

「当たり前じゃん。勉強もスポーツもできるのがあたしですから!」

「早く結婚してえな」



夏葉の言葉に胸がきゅーんと締め付けられる。



本当に早く結婚したい…。



1年以上も待ったんだもん。



一日でも早く夏葉の家族になりたい。



でも卒業してからというのは夏葉なりのけじめだろう。



あたしも一人前の大人にならなきゃね。



いつまでも夏葉にべたべたなガキじゃ、夫になる夏葉を支えられない。



あれっ、あたしもなんかちょっと大人になったんじゃない!?



夏葉の顔に手を伸ばした。



「ん?」

「ううん、触りたくて」



そう言ったら夏葉が笑って、体をかがめてあたしにキスした。



幸せな時間だなあ…。



「穂風、足しびれた」

「も~、今幸せに浸ってたのに…」

「いいから降りろ~」



仕方なく夏葉の足から降りて、夏葉の足をバシッと叩いた。



「いっ…。お前なあ…」

「ふーんだ」

「穂風は穂風だな…」



そう言って足の間に収められた。



こんな幸せを、夏葉と家族になってずっと続けていけると思ったら夢みたいだ。



はやく卒業できますように!
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