海よりも深くて波よりも透明
インタビューをひとしきり終えて、モデルみたいに撮影して。



最近、「雑誌の撮影してるときの顔がやわらかくなったね」と言われるようになった。



確かに昔はもっと舐められないように強気の顔つきだったかも。



仕事が終われば家で待つ夏葉に癒される。



「そういえば野本くんが彼女と別れたんだって」

「やべえ、穂風が狙われる…」

「狙われないよ…」



野本くんとは卒業後もたまに連絡を取ってる。



夏葉がいつもちょっと嫌そうだけどね。



もし夏葉が女友達とこうやって連絡取ってたら許さないからやっぱりあたしはわがままだ。



「夏葉って女友達とかいるの?」

「なんだよ急に」

「そういえば聞いたことないなって。クラスメイトとの写真はなんか見たことあるけど…」

「いたけど穂風と付き合ってからはほとんど連絡取ってねえな」

「いるんだ!!」



うわ~…。



やっぱり嫌!



自分のことは棚に上げ、ただ女友達がいたというだけのことでめちゃくちゃ嫌な気持ちになった。



「なんの友達?」

「嫌がるくせになんでそんな聞くんだよ…」

「嫌だけど知らないのもいや!」

「は~…。高校のときの同級生とかカメラ仲間とか…」



カメラ仲間にも女友達いるの!?



やだ~…あたしの知らない世界にいる女…。



「連絡取ってねえぞ。あっても男いるグループとかで繋がりあるくらいだし」

「2人きりで連絡取ってたらまじで許さない!」

「じゃあお前も野本と連絡取るなよ…」



あぅ…。



「の、野本くんは女友達みたいな感覚だもん…」

「俺も女友達に対してはそうだぞ」

「でも嫌なんだもん…」



あたしってほんとわがままだよね…。
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