海よりも深くて波よりも透明
~穂風~

あたしが世界トップのサーファーとして上り詰めて数年。



あたしたちも良い歳になった。



変わらずあたしを愛してくれる夏葉。



「夏葉~こっち向いて!」

「ん?」



海の上で魚の群れを撮影していた夏葉がふとこっちを見た瞬間に、あたしは持っていたカメラのシャッターを切った。



あたしたちは今、世界中をサーフトリップして過ごしている。



あたしが世界の頂点に立ったあと、夏葉があたしの映画を撮るって言いだして。



サーフトリップのドキュメンタリー映画。



「穂風のサーフィンを、誰よりも俺が美しく撮って記録に残したい」



そう言う夏葉が嬉しくて、すぐにOKした。



数年かけて撮っている映画。



夏葉にファインダー越しに見つめられるとちょっとくすぐったい。



だけど夏葉に撮ってもらうあたしの写真が一番好き。



そんな今日はカリフォルニアに来ている。



去年結婚した愛姫と悠星くんに会いに行くんだ。



その前にカリフォルニアの海でサーフィンしよう。



早朝から海に出てウォーミングアップしていたら、「あれ~?」と声がした。



声の方を見ると愛姫と悠星くん!



「なんだ、2人も来てたんだ~」



久しぶりに見る2人は相変わらず元気そうだ。



「今日波いいもん、当たり前じゃん」



愛姫の日本語はかなり上達した。



逆に悠星くんも結構英語ができるようになったみたい。



悠星くんも愛姫も、トップサーファーとして躍進している。



一日中波に乗っていたら、何人かから声をかけられた。



「Thank you」



笑顔で答えて握手する。



あたしたち、サーフ界では有名人だからね。



一日中波に乗って、乗り終えてから2人の新居にお邪魔した。



いまはもう2人はカリフォルニアにずっと住んでいる。



一瞬別れた時期もあったけど、今こうやって幸せそうだから本当に良かったなと思う。



新居はかなり広くて、アメリカのセレブって感じの家だった。



セキュリティも万全…。
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