海よりも深くて波よりも透明
通知来てるか確認しようと思ってスマホを手に取ろうとしたら、先生ににらまれた。



にこっと笑って誤魔化す。



これ以上はめんどくさそうなので、確認したい気持ちをぐっとこらえる。



それからは時計に早く終われと念を送っていた。



念を送ること数十分。



キーンコーンカーンコーンとチャイムが鳴る。



終わった!



チャイムが鳴った瞬間にスマホを取った。



通知は…ネットニュースの通知だけだ…。



トーク画面を恐る恐る開いてみると、既読はまだついてなかった。



がっかり…。



好きな人からの返事を待つ時間が世界で一番長いと思う。



結局返事が来たのは放課後家に帰ってから。



『マジ? 穂風料理とかすんの?』



夏葉からのメールに飛びついた。



疑問形で返ってくるとなんか嬉しい。



会話したいって言われてるみたいだ。



夏葉はそういうつもりじゃないかもしれないけど…。



都合よく考えさせてもらうもんね!



『普段はしないけどたまにはしてみようかなって思って』



ていうか夏葉に食べてもらいたいだけだし…。



リアはおまけ!



それから続く何気ないやりとり。



楽しい…。



しばらくして『既読』がつかなくなった。



忙しそうだ。



あたしはスマホを置いて家のトレーニングルームで筋トレ。



夏葉の好きな曲をスピーカーから流す。



しばらく運動してたら、ママが入ってきた。



おしゃれで美人のママ。



あたしに負けず劣らず焼けている。



「ん? 聴いたことない曲」



ママがそう言って何か言いたげな顔。



鋭いな…。



あたしはスルーして話題を変えた。
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