海よりも深くて波よりも透明
「召し上がれ」



リアルを無視して、穂風が言った。



卵焼きに伸ばした箸。



「うまいでしょ?」



穂風が誇らしげな笑顔で俺に言った。



うまいし…。



別に料理のできる女が好みとかはないが、なんか…好きだという感情がまた増えた気が…。



飯を食い終わり、波もうねりが入ってきて状態が悪くなってきたので、サーフィンは今日はもうやめることにした。



「俺さみぃから帰るわ」



こんな格好でいつまでもここいれねえし。



俺が立ち上がったら、リアルが止めた。



「あたし夏葉の家行きたーい」



はあ?



ナシだろ…。



家狭いし。



人を家に上げても手狭な家だとなんか気まずい。



距離感が近いっつーか…。



「俺、基本人は家に上げない派」



俺がそう言ったら、穂風が「え?」という顔をした。



なんか俺変なこと言った…?



「この前あたしのこと上げてくれたじゃん」



あっ…。



確かに。



あれはなんか、自然とそうなってたっつーか…。



全く気にもしてなかったな…。



穂風とは、自然体でいられたわけで。



やっぱ穂風は特別なのかも…。



「この前は流れで仕方なくな。ガキだって知ってたら上げてねえよ~」



そんな想いを打ち消すように、そんな言葉で誤魔化した。



実際、高校生って知ってたら上げてなかったかもしれねえし。



不純異性交遊とか思われたくねえ…。



ガキって言葉を使うのはわざと。



自分に言い聞かせてるし、穂風に対して線を引くように。



はあ…。



改めて、相手が高校生ってきついわ…。
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