海よりも深くて波よりも透明
「穂風、いい子っしょ?」

「…」

「あたしの見たところだと~、夏葉も穂風のこと好きっしょ。当たり!?」



こっわ…。



鋭いし…。



てか…『夏葉「も」』?



え、は?



俺が動揺しているのに気づいているのか気づいていないのか、リアルが話を続ける。



「穂風が高校生ってこと、気にしてんのぉ~?」

「…いや、高校生相手だから、より誠実に向き合って真剣に考えねえと」



って俺、何言ってんの…?



口滑らせた…。



そんな俺に構わず、リアルが呆れた声を出す。



「あのさ~、そんな態度はかっこいいけど、そう思ってる時点でその気持ちはめちゃくちゃ誠実なワケ。わかる?」

「…」



んなこと言われてもな~…。



この気持ちが一時的なものだったら、やっぱりそれは無責任だし。



俺は成人で、相手は5歳年下の高校生。



今まで俺が恋愛してきた女とは違う。



自分の感情に、もっと責任を持たないといけない。



経験上、そんなに強い感情とも思えないし。



俺が黙っていたら、穂風がトイレから出てきた。



「あれ? リア、なんでここいんの?」

「あっち一人でいるの怖いし!」

「あそっか、ごめん」



穂風は今の俺たちの会話なんて何も気づいてない。



元の場所に戻って花火を片付けてから、穂風と、穂風の家に泊まるというリアを家まで車で送って、俺も家に帰った。



花火って、どうやって捨てるのが正解なんだ?



ネットで調べて、書いてある通りに、水を含ませてから燃えるゴミに捨てる。



今日撮った写真を眺める。



一人、静かな部屋の中、穂風の笑い声が頭で永遠に再生されて。



はあ…。



どうしようもねえけど、好きだ…。



早く、気持ちが消えてくれ。



この花火のように、気持ちが消えるのなんて簡単だと、そう思っていた。
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