海よりも深くて波よりも透明
~穂風~

夏葉と海で遊んだ日の夜、あたしの部屋に泊まったリア。



寝る直前、月明かりの入る部屋で、リアがあたしに話しかけた。



「夏葉、いい奴じゃん」

「でしょ?」

「穂風はさぁ~、付き合いたいとか思わないわけ?」



付き合う…。



初めての恋に精一杯で、考えたことなかった…。



恋人への憧れもあったのに、いざ恋をすると目の前のことでいっぱいいっぱいでそんなこと忘れてしまってた。



それに…。



「多分あたしのことガキだって相手にしてないよ」



イラっとくるくらいガキって言われるし。



そういう風には、あたしのこと、見てないと思う…。



好きでいて、一緒にいられたら、それで十分幸せだ。



リアは何か言いたげな顔だったけど、あたしにあえて何も言わずに話をそらした。



「てか来月大会だったっけ?」

「うん、大きな大会ではないけどね。一応順位はつくけどお祭り的な意味合いの方が強い」



まあ、力を抜くつもりは一切ないけど。



特に、パパが審査員で入るなら、外野に舐められないように最大限のパフォーマンスしなきゃ。



「あたしバイトで行けないけど超応援してるかんね!?」

「あんたは本当~に最高の親友!」



隣で眠るリアに抱き着いた。



「うっとおし~」



キャーキャー言いながら、あたし達の夜は更けていく。



それから約一か月、あたしは大会の練習に励んでた。



休みの日はママの車で千葉や静岡の波が良いスポットに行ったり…。



前よりも夏葉に会える頻度が減ってて、会いたい気持ちばっかりが募る。



付き合ってたら、気軽に会えたりするんだろうか…。



それに、「好き」とか「会いたい」って簡単に言える関係ってすごく理想だ。



うーん、やっぱり付き合いたいかも…。
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