海よりも深くて波よりも透明
「夏葉からそんなこと言われるとはな~」

「誰かいないの?」

「紹介できる子はいねえよ~。マッチングアプリでもやるんだな」



マッチング…。



ヒロさんが俺のスマホを奪ってアプリをダウンロードしはじめた。



「何やってんすか…」

「一回やってみろよ。お前顔いいからすぐ捕まると思うぞ」



それからヒロさんが何やら勝手に設定を進めてく。



「ちょ、なんすかこの自己紹介」

「サーファーでフリーのカメラマンなんて誰が付き合いたいって思うんだよ」



いやいや、『都内在住の会社員です』って…。



大嘘じゃねえか…。



「ほら、選べよ。気に入るか気に入らないかでスワイプするだけ」



渋々やってみる。



こうやって人のこと振り分けんのも何か嫌な感じだな…。



「お前の好み分かりやすいな」

「確かに…」



見てみると、見事にみんな年上セクシー系。



穂風とは正反対。



まじでなんで穂風のこと好きなのか疑問だな…。



「ほら、もうマッチしたぞ。お前すげえな」

「まじ…?」



俺より2歳年上の都内のOL。



すぐにメッセージが飛んできた。



『こんばんは~。今何してますか?』



「貸せ」

「ちょっ」



またヒロさんにスマホを奪われる。



ヒロさんが何やら返事を返してる。



『家にいて暇してる感じです(笑)』

『なるほどね~。会社員だよね? 今日はお休みなの?』

『休みっすね~。そちらも会社員ですよね?どの辺ですか?』

『丸の内だよ~』

『え、俺もその辺!』

『本当に~? えっ、暇なら明日とか飲もうよ』

『マジ!? 超暇ですよ、俺』



めちゃくちゃ慣れてやがる…。



ヒロさんが俺にスマホを返してきた。
< 55 / 328 >

この作品をシェア

pagetop