海よりも深くて波よりも透明
「あたしのこと、好き?」

「ん…。分かんねえけど…めちゃくちゃ好きっぽい」

「あたしも大好き!」



夏葉の首に抱きついた。



こんな幸せなことってあるんだ。



好きな人があたしのこと好きなんて…。



今死んでも悔いはないなんて嘘。



あたしは欲張りだからこの先絶対に死にたくない!



夏葉があたしの前髪を少し払ってこっちを見た。



「で…付き合ってくれんの?」



胸いっぱいで返事ができなくて、あたしはぶんぶんと首を縦に振った。



夏葉はふっと笑う。



「じゃ、手はこうな?」



夏葉がそう言って、繋いだ手の指を絡ませた。



恋人繋ぎ…。



夢みたい。



「機嫌直ったか?」

「当たり前じゃん…」

「これからよろしく」



夏葉が優しくあたしの頭にぽんと手を乗せた。



「じゃあ…飯食い行くか?」

「行きます!」



夏葉に引かれるようにして歩いて、近くのお店でご飯を食べた。



目の前にいるのはあたしの彼氏…。



「何ニヤニヤしてんだよ」

「してない!」

「してた」



その笑顔もあたしだけに向けられてる。



最高…。



ご飯を食べてから車に乗った。



「帰るぞ」

「えっ、嫌だけど」



夏葉の言葉にあたしがそう言うと、夏葉が笑いながら片手であたしのほっぺをちょっとつねった。
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